ひんやりと静まりかえった夜明けの砂漠を歩く一人の若者。遠くの湖に、花で飾られた船が浮かんでおり、娘たちの歌声が聞こえる。岸辺に走り寄ると船は消え去った。若者は、そばに乗り捨てられていた小丹をこぎだした。太陽が昇り、若者は気を失った。織物の名手だった若者は、何不自由ない日常に飽き足らず「湖の向こうにお前の幸せがある」という老人の占いで旅に出たのだ。若者は対岸の古城で目を覚ました。そこには、月と雪という二人の王女が住んでいる。清純でやさしい雪が若者を見つけ、助けたのだ。雪に紹介された姉の月は、息を呑むような妖しい美しさを持つ女性だった。若者は雪に惹かれながらも、月の魅力に抵抗できず、誘われるまま彼女の寝室に入った。若者は二人に織物を織った。月には素晴らしい物が出来たが、雪には思う通りの物が作れない。ある日、城の外に出た若者は、月と会い、川の中で、花畑の中で激しく求めあった。城へ戻った二人を見た雪は愕然とする。「いとおしい月と悲しげな雪と、双子のように仲のいい二人の間に、自分は何を投げかけたのか」後ろめたさをおぼえる若者。姉妹は激しく争った。そして、月は若者を殺そうと決心し、ベッドへ誘った。若者に抱かれる月は、用意した短刀を手にするが、どうしても刺せない。「ああ、出来ない……」狂ったようにテラスにとび出した月を追った若者は、その場に釘付けとなってしまった。目の前を走り去る月がだんだんと鳥になっていくのだ。そして、全く鳥になってしまった月が、ゆっくり羽ばたきながら、庭の上を飛び去っていく。「あなたが美しすぎたために……、あなたが素直でいい人だったために……私たちは愛してはいけないあなたを愛してしまった……ああ……」雪がささやいた。「ぼくは、君を一番愛していたんだ……」絶叫する若者の上を、また一羽の鳥がゆっくり飛んでいった。
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