薄っすらと白い煙が立ち込める崩壊した病室で 看護婦の薫はツブロという患者と出会う いくつものネジで固定された鎧のようなギブスを纏ったツブロはこの 薄暗い地下室の住人だった 助けを呼ぶ薫 しかしその声は無情にもコンクリートの壁に跳ね返される そんな中ツブロが動けないのではなくここから出ようという意思がない事 を知る ツブロにとってこの病室は殻だった ツブロへの苛立ちを抑えながら薫はドアを塞いでいる土砂を掘り始めた 徐々に暑さを増していく病室 疲労が薫に押し寄せる 「もう 誰もいないよ・・・」ツブロの声をかき消すようになおも激しく土砂を 掘る薫 やがて幻覚幻聴が襲いかかる 壊れていく薫 生き延びようと土砂を掘り続け土と血に染まった細い薫の手 その手が次第にツブロの心を揺り動かす 床に転がる鉄パイプを拾い狂ったように病室の壁を叩き出すツブロ わからない・・・薫を助けるためか・・・追い出すためか・・・ 「早く・・・出て行ってくれ・・・」 やがてツブロのギブスから 静かにネジが跳ね落ちた 気を失ったツブロを残し病室の外へ出た薫は暗い廊下の先を目指す 一人残されたツブロ 薫がいない部屋 今まで感じたことのない孤独が ツブロを襲う 震えるツブロのもとへ薫は帰ってきた 暗い廊下の先もやはりガレキに 塞がれていた 暗い病室で寄り添う行き場を失った弱い二人 病室がきしみだし割れた排水管から流れる水が病室を濡らす 「もうすぐ 誰かが見つけてくれるわ・・・」 壊れ行く二人を閉じ込めたまま 冷たい密室は悲鳴を上げ 死へと加速する
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