前作「水俣一揆」から一年半ぶりで土本典昭監督が発表した二時間三三分の長編記録映画。「水俣 患者さんとその世界」以来四年間にわたる土本典昭と青林舎の水俣病とのかかわりあいは、「不知火海」で一つのサイクルを終わったといえよう。土本典昭とカメラマンの大津幸四郎は、魚と共に生き死んでゆく不知火海の漁民たちが、水俣病になることがわかっていながらも海に執着し、漁をして魚を食べてゆかざるをえない--その姿を、自分たちも有機水銀に汚染された美味い魚を食べながら、淡々と撮り続ける。チッソからの補償金で豪邸を建てたある患者の一家は、働く喜びを奪われた毎日を、敗戦後の高度経済成長の象徴である最新式の電気器具に囲まれながら、空しく過ごしている。とりわけ悲惨なのは胎児性水俣病の子供たちである。子供といっても、彼らはすでに青年と呼ぶべき肉体をもつようになってきている。ある少女は、泣きながら医者に頭を切って自分の脳を手術してほしいと言う。しかし、この映画は決して暗くはない。「不知火海」を撮り終えた大津幸四郎は次のように語っている。「私達がいつの間にか、切り捨ててしまった生活の記憶、人々のやさしさと生活からにじみ出る音色が不知火の海には溢れている。水俣の海は殺された。しかし、水銀毒にじわじわと侵されながらも、不知火の海は生きている。人々は生きている。水銀毒に身を侵されながら、必死に生き抜こうとしている」。(16ミリ)
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