明治十年の西南戦争下、軍資金集めの賭場を荒し廻る子供連れの盲目の怪憎がいた。精悍な風貌を、饅頭笠で隠した了達の目的は、師の雲達から預かった、捨て子の盲目の小坊主、林太郎の母、お蔦を探すことにあった。紀州路に入った了達は新宮の遊廓常盤楼へ上るが、折しも借金がかさんで泉州・堺へ鞍替えさせられる寸前の娼婦と知りあう。この女こそ探し求める林太郎の母親お蔦であった。了達と林太郎は、お蔦を追いまたも堺へ飛ぶ。途中、了達は白浜に立寄ったが、陸軍省微募係の谷川、寺岡と堺の博徒泉州屋辰五郎や金蔵らが、軍夫の調達をめぐって悪取引きをしており、この金を盗んで捕まった、お半と八丁松を助けたことから、一味に狙われる羽目になる。一方和歌山に軍需物資の集積をはかる陸軍少将前島と辰五郎らは、琉球の貿易商花城万里の妹、麻那から火薬二百樽を安く買いたたこうとするが断わられ、麻那の命をつけ狙うが、了達に邪魔される。堺に入った了達は、東京の眼医者、三田村青郷と知りあい林太郎の目は視力快復の見込みがあることを知らされる。そして横浜の名医に紹介するという青郷の好意に、我が事のように喜ぶが、林太郎の母お蔦はすでに四国に売られたあとだった。そのころ火薬を満載した万里の船が堺の港に到着し、これを狙う前島らは最後の手段として、麻那と林太郎を誘拐する。一味の悪どさに憤怒を爆発させた了達は泉州屋に乗り込むが、目の前で麻那が斬殺されてしまう。そして“火薬を売らないで”と言い残して絶命した麻那の忠告に初めて目ざめた万里は、火薬の樽に銃弾を射ち込み大爆発を起こさせる。前島、辰五郎一味は、あわてて樽の間へ逃げ込み自ら壊滅していくのだった。
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