1942年製作映画だけあってか戦時色の漂う作品です。軍部要請による電力国家管理令により全国の電力事業者が国策会社・日本発送電や地域配電会社への出資統合完了年であり、陸上交通事業調整法や海上交通事業調整法などによる陸海運事業者の戦時統合が進み、国家総力戦の時代背景の下に作られた戦時国策反映映画であることを鑑賞する前に先ず理解しておくことが必要です。回漕業者の若旦那を演じている上原謙のセリフにも代々続くのれんを捨ててまでも回漕業者の戦時統合に賛成し、敵米英の海運力を上回らねばならないという悲壮な決意を述べさせている場面があります。これに対して、坂本武が演じる代々ののれんを守らねばならないとする頑固な父親と若旦那の対立という時代を背景にした父子の世代間対立をも描いていることが、この映画に奥行きを与えています。病に倒れた父に代わってライバルの回漕業者との競争に勝ったものの、所詮小さな個人競争に過ぎないと感じた若旦那は中国大陸目指して日本を去ってしまい、回漕事業者の戦時統合の話はあいまいになっています。木暮実千代の役回りもいまひとつはっきりしないままです。家族物語が戦時時局要請によってあいまいにされてしまっている感があります。
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