祇園の芸妓菊代の娘登女子は、未来の舞妓を嘱望されていたが、それを振り切って、東京で声楽の勉強をしていた。ところが、その母が入院したという報せを受け、彼女は急いで帰郷することになった。帰りの車中で、彼女は胃痛に苦しみ、隣り合わせた見知らぬ医大生にやさしく介抱してもらった。家に着いてみると、母菊代の病気は思ったより重く、高辻病院長は致命的な癌であると診断した。登女子の悲しみは限りがなかった。しかしその病院の息子の英治こそ、汽車の中の医大生であることが分り、間もなく登女子は心ひそかに彼を恋する気持になっていた。だが、母の病気により、登女子も音楽学校を退いて、舞妓として立つ決心をした。一方、大学を卒業して再び京都に帰った英治は、舞妓姿にすっかり変った登女子に目を見張り、やがて熱き思いを打明け求婚した。登女子はうれしかったが、英治には蓉子という婚約者があると云...
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