明朗活発な女子大生のぶ子は、級友の五郎に弁当をつめてくるというやさしい一面も持っていた。淡路島から上京したのぶ子は長谷川家に下宿していたが、彼女はそこの長女夫佐子が引っ込み思案なのを心配して、色々と助言を惜しまなかった。のぶ子と五郎は若者らしい交際をつづけ、二人の学生生活は楽しいものだったがある日、病床に伏していたのぶ子の母富子の容態が悪くなったため、のぶ子は急いで故郷に帰った。女遊びに明け暮れている父の兵三は、さすがに神妙に富子の枕元についていたが、富子は兵三を遠ざけるとのぶ子を呼んだ。富子はそこでのぶ子の出生の秘密を話した。彼女は富子がかつて熱烈に愛した学生との間に生れた子供だったのだ。しかし、のぶ子は富子がその学生を愛していたのだから、自分の誕生にうしろめたさは覚えないと母を慰めた。富子は間もなく他界した。そのころ、五郎はのぶ子のいない東京で淋しさを感じ初めて自分が彼女を愛していることを知った。しかし、若い五郎がのぶ子との明朗な交際だけで満足するはずもなかった。そんな彼の前に現われたのは、女盛りのデザイナー光子だった。彼女は夫の外国旅行中、若い男と知りあってはさびしさをまぎらわしていた。彼女の誘惑にのった五郎は、あるホテルの一室で抱きあった。やがてのぶ子が帰ってきた。その彼女を驚かしたのは、化粧が上手になり恋人を連れ歩く夫佐子の変りようばかりでなかった。五郎がのぶ子の前で妙におどおどしているのだ。やがて彼女はその理由を知った。ショックを受けたのぶ子だったが、夏休みがきた時、何事かを決心した彼女は故郷に五郎を招いた。そして、五郎に愛を告白すると、彼女は身体を与えたのだった。そのあと、ひとり海辺を走り回るのぶ子の頬を流れる涙は女になった彼女の感傷だったかもしれない。
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